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一人当たり250円の投資で中国に勝つ。ILCの建設を急げ。

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 AI (人工知能)、IoT、5G、ビッグデータの活用・・・などなど、最近何かと話題に上る科学技術関連のニュース。

「人類の技術進歩は止まらない!」 と明るい展望が見えているかのように思われますが、残念ながらそれは“日本以外の話”です。

日本は今あらゆる分野の科学技術において“世界から置いてけぼりにされている”と言っても過言ではない状況なのをご存知でしょうか?

 

[目次]

 

宇宙の謎を解明する技術が中国に先取りされる

みなさん「加速器」という物をご存知でしょうか?

「ん? 何だ? ゲームの話か?」

「あれだろ? Bダッシュだろ?」 (←ファミコン世代にしか分からないww)

と思ったアナタ。ちょっと待ってください。

加速器というのは物理学における超巨大実験施設のことで、素粒子をもの凄い速さで飛ばして衝突させ、それによって宇宙誕生の謎や物質の成り立ちを研究するという物です。

その施設の世界最大規模の物が中国で建設されようとしているというニュースが流れました。

円周百キロに及ぶ世界最大の加速器の建設が中国で計画され、早ければ二〇二二年の着工を目指していることが分かった。計画を主導する中国科学院高能物理研究所の王貽芳(おういほう)所長が本紙の取材に応じ、「三〇年ごろの完成が目標だ」と明らかにした。日本でも次世代型の大型加速器の建設が検討されているが資金面で難航しており、先端物理学研究の分野で中国に先を越される可能性が出てきた。 

これを読んで「中国すごいな」と思うことなかれ。

実はこのプロジェクトは日本での建設が進められようとしているのです。場所は東北の岩手県。それも日本人が勝手に主張している訳でなく、当事者である世界中の研究者たちが「日本でこそやるべき。いや、日本でしかできない。」と日本に要請しているのです。

ところが記事にもある通り、日本での建設工事は着工されていません。それどころか計画段階。

世界中から要請されているにも関わらず、一体何をモタモタしているのか??

 

日本での建設が進まない下らない理由

日本での着工が進まない理由。

それは他でもない日本政府が「お金がないから」という理由で躊躇し続けているからです。

じゃあ、それがそんなに大金なのか?というと、実は1年当たり300億円ぽっちです(建設事業なので10年間かかりますが)。もちろん一個人で考えればとんでもない金額ですが、GDP550兆円を抱える日本という国で考えれば、投資額はたった0.05%の投資にしか過ぎないのです。

何も損することはないのに何を躊躇しているのか。300億円 x 10年と言ったって、仮に年収500万円の家庭であれば、年間2,500円の話なんですよ。

しかも別に払い損という訳ではありません。その投資分の雇用は10年間確実に生まれる訳です。その経済波及効果は4.3兆円、約25万人の雇用創出が見込まれています。後は日本政府が「はい。やります!」と決断するだけ。本当にそれだけなのです。

 

もし自分の子どもが、例えば医者になりたいとか、科学者になりたいとかいう夢を抱いて、もっと勉強したいから塾に行きたいと言ったとしましょう。それが年間2,500円だったら躊躇しますか? 

日本政府はその程度の話を躊躇している訳です。

 

宇宙の謎に迫るだけじゃない。ILCが生み出す価値。

科学にあまり興味がない人であれば、もしかしたら「宇宙の謎を解明するなんて言われても、生活にあまり関係ないし・・・」と思われるかもしれません。

ちょっと待って!

そんなことはありませんよ!

たとえば、病院で使われるCTスキャンやレントゲン、それにMRIなどの検査技術も元はILCと同じ「加速器」の技術から生まれたものです。がんの早期発見ができる「PET検査」(陽電子放射断層撮影)も同様。そして、もっと身近な例は、今私達が毎日活用しているインターネットの技術も、元々はスイスにあるCERNという素粒子研究施設の科学者たちが情報共有のために生み出した技術だったのです。

このように「宇宙の謎を解き明かす」ということ以上に、それにまつわる副産物によって私達は日頃多大な恩恵を受けているのです。

 

その最先端モデルであるILCが日本で建設されるとなれば、今の我々には予想もつかないような新しい技術が生み出されている可能性も非常に高くなります。

 

実は低迷しつつある日本の科学技術

そしてもう一つ強調しておきたいのは、このILCが日本で建設されることによる、日本の科学技術力の再生です。

ここ数年立て続けにノーベル賞受賞者を排出しているので実感がないかもしれませんが、今の日本の科学技術力は非常に危険な水域に低下しつつあります。

去年の6月に政府が閣議決定した今年度の科学技術白書の内容は「日本の科学技術は力が急激に弱まった」という恐るべき内容。それによると、日本の論文数は2004年の6万8000件をピークに2015年は6万4000件に減少。主要国で減少しているのは日本だけというのが現状であり、日本の科学技術力はもはや衰退期に入ったといえるのです。

 

その理由の一つが研究予算がつかないこと。

科学技術関係予算の伸び率を見ると、2000年をベースにして考えると


日本は2018年度で1.1倍
米国は2017年度で1.8倍
韓国は2016年度で5.1倍
中国は2016年度で13.5倍


と伸びが顕著となっているのです。
日本が1.1倍にしか増えていないにも関わらず、韓国でさえ5.1倍、中国に至っては2016年でも13.5倍ですので、この差はもっと開いているでしょう。
これだけ諸外国と予算に開きがあれば、「日本の科学技術は力が急激に弱まった」のも当たり前です。

予算がつかなければ当然研究はできないし、研究員も養えず、技術や知識は衰える一方になります。”資源小国”日本にとっては、それは致命的なのです。

 

たった250円の借金を恐れて未来の希望と成長を見送る日本

よくマスメディアでは「日本の借金は1,000兆円、一人あたり800万円」だとか言っています。それ自体が既に根も葉もないデタラメですが、仮にそれが本当だとしましょう。

それでもILCの建設費用300億円/年間を国民一人当たりで計算すれば、一人当たりたった250円。一人当たり800万円の借金が800万+250円の借金になったところで一体何だというのでしょうか?

ましてやそれによって、多大な経済的効果と科学技術の進歩という莫大な見返りがあるとしたら、何を躊躇することがあるのでしょう??

「年間250円も出費が増えたら日本経済は破綻する!!!」とでも言うのでしょうか?(笑)

 今どき小学生でも年間250円の出費を躊躇する子はいないでしょう。ですが、それを本気で躊躇しているのが日本政府というのが実態なのです。

その程度の出費も惜しむ国に「経済成長は日本経済の柱」とか言われても全く説得力がありません。

 

上で述べたように最新式加速器の建設は日本がもっとも理想的であるということは事実です。中国で進められている加速器は「円形のトンネル」なので、円形であるために軌道を曲げなければならないのでどうしてもエネルギーに無駄が生じます。したがって、本来実験に必要なエネルギーを十分に稼げません。

しかし、日本で進められているのは「直線のトンネル」なので、理想的なエネルギーを稼げるのです。その直線トンネルの建設が可能な技術と強固な岩盤があるのが日本だけ。

だからこそ、日本はこのILCの建設を人類のために進めるべきなのです。

 

それほどの理想の実現が目の前に転がっているのに、一人当たりたった250円の投資を一体なぜ渋る必要があるのでしょうか?

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございます😊