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今さら聞けない経済の疑問「なぜ物価上昇率2%が目標なのか?」

安倍政権発足以来、テレビやネットなどでよく聞くようになった「物価上昇率2%」という景気回復の目標。

しかし、おそらく多くの人がこのように思っているんじゃないでしょうか?

 

「なんで物価上昇を目標にするの?」

「なんで2%が目標なの? 3%とか1%じゃ駄目なの?」

 

と。

これには「そもそも物価なんか上がらない方が良いじゃん」という感覚が普通にあるからだと思います。ましてや「2%!」とか言われても、「何で???」とチンプンカンプンなのではないでしょうか。

 

もちろんこの2%という数字は適当に引っ張ってきた数字ではありません。重要な意味があるのです。

そこで今回は「“物価上昇率2%目標”の意味」について解説してみたいと思います。

 

物価は上昇していた方が健全

当たり前の話ですが、物価というのは常に上下します。

私達の私生活のレベルでもそうですよね。食品が上がったり下がったり、洋服の値段も上がったり下がったりします。

そして物価が上がっている状態をインフレ、物価が下がっている状態をデフレと言います。

消費者の立場で考えると物価は下がった方がありがたいです。ただ、逆の立場・・・つまり生産者の立場で考えるとどうでしょうか?

物価が下がるということは売上も下がりますので、利益も下がります。利益が下がると従業員に支払う給料も下がります。

そう。物価が下がるということは回り回って私達の給料が下がることになるので、手放しでは喜べないのです。

 

逆に言えば、毎年20%、30%とか極端な話ではなく「少しずつ」であれば、むしろ私達の給料が増えることになりますので、実は長い目で見るとそっちの方が得なのです(もちろん、会社がちゃんと利益アップに見合った給料を支払うことが前提ですよ)。

 

つまり「物価を2%上昇させる」という目標は、それが私達の給料アップに繋がる・・・つまり景気が良くなるという意味で正しい目標なのです。

そこで次に問題になるのが「じゃあ、何%の上昇率が適正なのか?」ということです。

 

※デフレとインフレの違いについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

 

なぜ物価上昇率は「2%」を目標にするのか?

では早速「2%」の根拠についての説明に移りましょう。

 

この2%という数字にはいくつかの根拠がありますが、代表的なものを2つ挙げます。

それは

 

1) 過去のフィリップス曲線(後で説明)から考えると、日本では2%程度が一番完全雇用に近い状態にある

2) 2%というのが多くの先進国が目標にしている数値である

 

という2点です。

この2つをもうちょっと詳しく説明しましょう。

 

1) 過去のフィリップス曲線から考えると、日本では2%程度が一番完全雇用に近い状態にある

まずフィリップス曲線って何やねんって話ですよね。はい。

フィリップス曲線いうのは20世紀半ばの経済学者フィリップスが考え出したものです。だからフィリップス曲線というんですね。そのまんまです。

これはインフレ率と雇用の関係に関係性があることを示した曲線で、

  

「物価上昇率が上がると失業率が減って雇用が増える。逆に物価上昇率が下がると雇用が減り失業率が高くなる」
 

というものです。

つまり物価が上がると雇用がふえて、物価下がると雇用が減るということ。

 

とは言え、いくら物価が上がれば雇用が増えるとはいっても、20%も30%も物価が上がってはたまったものではありません。「丁度良いレベル」というのがあるのです。

それが日本の場合、過去の実績から推測するに「物価上昇率2%程度が一番失業率が低く、完全雇用に近い」と言われています。

だから、「物価上昇率2%」が目標として掲げられているという訳です。

  

2) 2%というのが多くの先進国が目標にしている数値である

「物価上昇率2%」を目標にするもう一つの理由はこれです。

まぁ、ぶっちゃけて言うと「他の国もみんなそう言ってるから、2%ってことにしとくか」という話です。

このように書くと「なんて主体性がない国なんだ!」と思うかもしれませんが、一応ある程度合理性はあるのです。

 

分かりやすくするために話をメチャクチャ単純化して説明します。

 

例えば他の国が2%を目標にしているのに対して、日本だけが1%を目標にしたとしましょう。

そうするとどうなるのか?

 

ここにアメリカと日本で同じ1ドル (100円)で買える缶ジュースがあったとします。

そして日本は物価上昇率を0%目標、アメリカは2%目標に設定して、実際に達成したとします。

そうすると

 

・日本では相変わらず1ドル(100円)で缶ジュースが買える。

・アメリカでは1ドル(100円)で缶ジュースが買えない(缶ジュースが2%値上がりしてるから)。

 

ということになります。

これは1ドルで買える物の量が減ったということですから、ドルの価値が下がったということになります。

そして、ドルの価値が下がったということは、円の価値が上がったということになるのです。

つまり円高、ドル安です。

 

円高/ドル安になるとどうなるのでしょうか?

例えば、先程の100円の缶ジュースをアメリカに輸出したとしましょう。

アメリカでの物価が上がる前でしたら1ドルで買えましたが、物価が上がってしまったら1ドルでは買えなくなります。つまり日本から輸入した物の値段が相対的に高くなってしまうのです。

 

値段が高くなってしまえば、海外で売れる量も減ります。輸出企業は大打撃! ということになる訳です。

 

実際に物価が目標にした通りにならなくても、「物価上昇率の目標を下げる = 政府は円高を容認するつもり」と受け止められれば、それだけで市場に影響が出るという訳です。

そういう意味で「他の国々と同程度の2%を目標にする」としているという側面もあるのです。

 

 

まとめと今後の課題

という訳で今回は「なぜ政府が物価上昇率2%」を目標にしているかを解説しました。

皆さん“◯ッテン”して頂けましたでしょうか? (笑)

 

ただ。

実は今の日本にはこの物価上昇率2%という目標に対してある問題が生じています。

それは残念ながら“ここまで説明してきた理論通りには、現実が動いていない”ということです。

 

確かに雇用状況は改善しています。

しかし、上で説明したフィリップス曲線が正しいと考えると、雇用状況が改善しているのであれば物価上昇率も上がっているはずです。

そして適度な物価上昇は景気を回復させて、国民の賃金を伸ばすはずです。

つまり、雇用状況が改善しているなら経済も改善しているはずなのです。

が、実際にはどうでしょうか?

みなさん景気回復を実感してらっしゃいますか?

 

残念ですが「NO」でしょう。

一部の富裕層や株主を除けばほとんどの人が景気回復を実感していないはずです。

それもそのはずです。

実は「物価上昇率2%」という目標のベースになっているフィリップス曲線が、現在の日本では成立しないという驚くべき自体が起こっているのです。

つまり、「経済学の常識からかけ離れた現実」が日本で起こっているということです。

 

このことについては次回また機会を改めてご説明します!

 今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆