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ふるさと納税は政府主催の「猫とライオンのガチバトル」興行である

 泉佐野市の「ふるさと納税返礼品にAmazonギフト券」問題で一気に注目が高まった「ふるさと納税」制度。

泉佐野市がAmazonギフト券という「地元産業」とは無関係な商品を「納税の返礼品」としたことで、莫大な税収を獲得。泉佐野市は極端な例だとしても、そのような高額の返礼品合戦が各自治体から相次いだことで、怒った総務省がふるさと納税の制度を改正しました。

 

今後はふるさと納税による「寄付額の3割」までの物しか返礼品として使用することはできなくなったので、今までのような「高額商品を安く手に入れるためにふるさと納税を活用する」という手法はちょっと落ち着くように見えますが・・・。

私はそもそもこのふるさと納税という制度自体を撤廃するべきだと思っていますので、今日はそのことについて投稿してみたいと思います。

 

 

 

ふるさと納税の建前上の目的 

正直、私も泉佐野市が返礼品にAmazonの商品券を用意したことは、「下世話だな」「品がないな」とは思います。一応ふるさと納税は実際に住んでいる所とは別の自治体を応援するために、その自治体に住民税を支払うことができるというシステムです。
例えば私は九州の出身ですが、今は全然別の地域に住んでいます。

そういう人間が地元九州の産業を応援したいと思った時に、このふるさと納税を活用して、自分の意思で応援できるというのが利点として挙げられていました。


だったら別に個人がそれぞれ自治体に寄付すれば良いだけじゃないか、という話なんですが、これは一応建前としては「地方創生事業の一環」として導入されたものです。

つまり、東京都などの都心部と地方都市で税収の格差が開いていたため、その格差を是正し地方都心の税収を増やすということが目的だった訳です。


ですが、そもそもこの目的が怪しいと私は思うのです。

というのが、そもそもこの目的からすると、本来は別にふるさと納税などという新しい制度を導入する必要などないからです。ひとつには地方交付税交付金という制度がありますので、都市と地方の格差是正にはそれを使って地方にお金を回せば良い話です。

また、本当に地方の創生を考えるのであれば、何よりも重要なのはインフラ整備のはずなのです。

 

インフラ整備の地方創生への寄与

ちょっと話が逸れますが、少し前に和歌山県にある白浜市がテレビで取り上げられていました。というのは、和歌山県という一見都心部から離れた場所に、本社オフィスを置く企業が増えているというのです。

下記の産経新聞でも取り上げられています。

なぜ辺鄙な(というと地元の方には失礼ですが、「都会ではない」というイメージがあるということで・・・)場所にオフィスを構えるのか?

その理由はこの記事にも書いてある通り

県内屈指のリゾート地でありながら、南紀白浜空港から東京・羽田空港まで約1時間20分と利便性も高い立地にあることも注目を集める秘訣で、担当者は「東京からすぐに行ける白浜町の魅力は、とても大きい。今後も企業の多様な働き方に対応していきたい」と話している。

和歌山県にありながら、空港が近くにあり東京から1時間20分で行けるなどの実際的な移動利便性の高さがその理由となっています。

 

一方、全く逆の例となるのが山陰地方の鳥取県です。

下記は去年の東洋経済の記事ですが、

 

鳥取市と下関市をほぼ国道9号線に沿って建設が進められている山陰道は、2018年4月現在、総延長380㎞のうち、まだ45%しか供用されておらず、しかもその供用区間はどうしたらこんなに細切れにできるのかというほど、途切れ途切れになっている。


 現在の開通区間で最も連続しているのは大栄東伯IC~出雲IC間で、およそ100キロメートル。その東側に2区間、西側に6区間の細切れ開通部分があり、全体を通して走ろうとすると9回も高速道路区間と一般道路区間を出入りすることになる。これでは高速道路としての一体性が保たれず、整備を進めたくなるのもうなずける。さらに、まだ調査にすら着手できていない区間が全体の24%もあって、全線開通のメドはまったく立っていない。 

 山陰地方の高速道路未整備は本当にひどいもので、上記のように鳥取県から他県へ移動するために何度も高速道路と一般道路を乗り継いで行かなければならないという状況です。しかも、多くの区間ではその高速道路も片側一車線で中央分離帯はポールが立っているだけ、という区間もあるそうです。お、恐ろしい・・・。

一体自分が経営者だったら、そんなところにオフィスを構えようとするでしょうか?

 

確かに白浜市と鳥取県の例はちょっと極端な比較かもしれません。

ですが、このようなインフラ整備の度合いが企業誘致や企業の生産性に非常に大きな影響を与えることは誰でも想像がつくことです。

もし本当に地方創生を真剣に考えているのであれば、まずはそのような極端な地域格差を縮小するべく日本政府がインフラ整備を整えることから始めるべきです。スタート地点が違う地方自治体を「よーい、ドン!」で競争させることは全くフェアではないのではないでしょうか。

 

ふるさと納税が生むのは血みどろの自治体抗争

結局このふるさと納税というのは、政府主催の「猫とライオンのガチバトル」を見世物にしているだけではないかと思うのです。

都市部や地方の地域格差と言ってもその理由や事情は様々ですから、それを解消するための方策もそれぞれの地域によって異なるはずです。その中でも上で述べたようなインフラ整備などは、地方の経済力をなす根本的な要因です。これを「独自のアイデア」や「地元の魅力」で勝負するなどというのは、猫と虎を同じ檻に入れて「さぁ、それぞれの特性を生かして戦わせてみましょう。果たしてどちらが生き残るか?」みたいな見世物をしているのと同じではないでしょうか。

 

例えば勝敗の基準を「どちらが可愛いか?」とかにすれば猫にも十分勝ち目があるでしょう。しかし、戦わせてどちらが強いか?という基準では端から勝負になりません。

インフラ整備をしていない地方と都心部を“経済力”という分野でガチバトルさせても、そもそも“お金を稼ぐ”という基準であれば端から勝負にならないのです。

 

本来政府の役割とは、そのような地方ごとの経済力の違いが極端につかないよう税収を再分配したり、交通インフラを整えて地方の魅力が創出しやすいような環境作りを行うことです。それを「ルールは作ったから、後は自己責任でそれぞれ戦ってくれ」というのでは、単なる弱者の見殺しでしかないのではないでしょうか。

特に、ふるさと納税というのは本来それぞれが住む自治体へ支払う地方税を各地域へ分配する方式です。それが意味するのは、分配する自治体と分配するバランスが変わるだけであって、全ての自治体を合わせた税収分が増加するわけではないということ。つまり、予め上限が決まっている賞金を一番勝った者から順番に分配していくということであって、各自治体の間で血みどろの抗争を行わせて政府は高みの見物を決め込んでいるというシステムなのではないか。

 

今回の泉佐野市と総務省のバトルのような社会の“無益な分断”を見るにつけ、このような血みどろの抗争を政府が主導することが正しい政治のあり方とはとても思えないのです。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆