Dive Into The World

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トランプという色眼鏡が曇らせる米中貿易戦争の本質

今週世界を騒がす大事件が起こりました。

そう、言うまでもなく、Googleがアメリカ政府の意向を"忖度"して(笑)、中国でのスマホ用OSとアプリのアップデートを停止すると発表したのです。

 

 

まず、この問題を考える上で、外せないポイントが2つあると思います。
1つは、昨年10月にアメリカのペンス副大統領がワシントンで行った、対中政策の転換を宣言した演説。
そしてもう一つは、今のアメリカの戦略に対する批判は「もしトランプが大統領じゃなくても同じように批判されていたのか?」ということです。

 

ペンス副大統領の鉄のカーテン演説 (冒頭)

日本ではあまり報じられませんでしたが、昨年10月4日にワシントンで講演を行いました。そこで経済や安全保障などの分野で中国との対決姿勢を明確にした演説を行いました。米ソ冷戦の始まりを告げた「鉄のカーテン」演説の再現とも言われているほど、歴史的に大きな出来事です。

 

この演説でペンス副大統領が演説をざっと追いますと・・・

 

第二次大戦前、中国が諸外国の植民地と化していた時代から、アメリカは中国の主権を維持する目的でサポートを続けてきた。しかし、いざ大戦が終わると中国は拡張主義をとり始め、アメリカと対立するようになった。実際、朝鮮戦争なような軍事衝突にも発展した。

それにも関わらずアメリカは中国が自由な国へと発展すると信じて、サポートを続けてきた。「経済面のみならず政治面においても、古典的な自由主義の原則・私的所有権・信教の自由など、あらゆる人権を尊重するであろうと。」

 

しかし、ペンス副大統領はこのように言い切ります。

 

「だが、その希望は結局満たされなかった」

 

と。

 

ここからペンス副大統領は猛烈な中国批判を展開します。

 

ペンス副大統領の鉄のカーテン演説(中国批判)

・中国は“アメリカが協力した”WTOに加盟の2001年より過去17年間で、GDPは約9倍に成長した。

・しかし、そのアメリカから知的財産窃盗、不当な関税や為替操作などによりアメリカから利益を吸い上げつづけ、アメリカの対中赤字は約42兆円にまで膨らんだ。

・中でも最悪なのは、中国の安全保障部署がアメリカ技術に対する大規模窃盗の糸を裏で引いていることだ。

・信仰の自由については、迫害によって中国のキリスト教徒・仏教徒・イスラム教徒を叩きのめしている。

・アジア、アフリカ、ラテンアメリカに対しては、融資条件の不透明な「債務トラップ戦略」により、莫大な借金を貸付け、その代償として軍港の確保などを行っている。

・その巨大市場を背景に、中国での経済活動を活性化させるアメリカの企業経営者たちに対して、アメリカ政府の貿易戦略を非難させるなどの脅迫をしている。

 

などなど、もうとにかく烈火のごとく怒り狂っています。

要するに「こっちが甘い顔してたら調子に乗りやがって! もう許さん!!」ということですね。

 

ペンス副大統領の鉄のカーテン演説 (対抗策編)

そしてペンス副大統領は「アメリカの政治と製作に対する北京の悪意ある影響と妨害について言えば、我々はどんな手段を用いてもそれを排撃する」とまで言っています。

その手段について、ペンス副大統領は具体的な例として「Googleのアプリ開発を中止させる」と述べています。

そしてその政府方針を受けて、実際Googleは5月20日にファーウェイに対してスマホ向けアプリとOSのアップデートの提供を中止することを発表。グーグルの広報担当者は声明で「(米政府の)命令を順守し、その影響を確認している。既存のファーウェイ製品では、グーグルのアプリ配信サービスなどは機能する」と説明しました。

 

このペンス副大統領の「鉄のカーテン」演説から今回のGoogleの発表への流れで見て取れることは2つです。

すなわち

 

・Googleのような多国籍企業も結局は“アメリカの企業”である

・グローバル化によって国境がなくなるということは幻想であり、民間企業も国家の管理の下でしか活動することはできない

 

ということです。

 

しかし、残念ながら日本の大手メディアはこのことが全く理解できていません。ほとんどのメディアが今回のGoogleの決定、アメリカ政府のファーウェイへの一連の規制を“経済(というか金儲け)への影響”という側面でしか見ていません。

 

その理由はいくつかあると思いますが、私が大きな理由だと考えるのは「トランプ大統領」の存在です。

 

トランプを侮ってはならない。

トランプ大統領と言えば、日本ではホワイトハウスでの記者発表中での記者との揉めごとや、Twitterでのトンデモ発言などを取り上げて「いかにトランプが馬鹿な大統領か」みたいな“トランプいじり”とでも言うべき報道に終始しています。

だから、今回のファーウェイへの措置のような行動をアメリカがとると、「またトランプが迷惑なことをしでかしている」という色眼鏡で見てしまいます。

 

しかし、上記のペンス副大統領の演説を踏まえて考えると、今トランプ大統領が行っている中国に対する強硬な政策は、単なるトランプ個人の思い付きや激情にとらわれてやっている訳ではないことが分かります。

今回の一連の騒動はそんなレベルの話ではなく、アメリカが国家として中国に対し真剣に闘う意思を示していることは間違いありません。恐らく中国自身がそのことを一番理解しているのではないでしょうか。

 

そして、間にはさまれた“平和ボケ日本人”だけが、トランプという色眼鏡で物事を見ることで今回の騒動を「単なる貿易戦争」程度にしか認識していないのです。

 

貿易戦争というと単なる経済競争の一環のように捉えてしまいがちですが、貿易戦争とは実際に戦火を交えないだけで実際の戦争と変わりません。というよりも、今はもう既に“サイバー上では戦争の火蓋は切って落とされている”と考えるべきでしょう。

トランプ大統領は決して日本で報道されているような単なる馬鹿ではない。

(自分で考えたかどうかはさておき)中国との情報戦争、覇権戦争の一環であり、今中国を叩いておかないと今後中国は手がつけられないほど強力な存在になるという危機感を強烈に抱いており、アメリカ国家としての戦略に基づいて動いているということを、私たちはハッキリと認識しなければなりません。

 

もはや「グローバル化で国境がなくなる」とか、馬鹿な絵空事が通じる世界ではなくなります。もう世界の潮目は完全に変わった。これからは国家と国家のむき出しの戦いが始まる時代。

その中で、どのようにグローバル = 単一化ではない、新たなインターナショナル = 国際的な強力関係を築いていけるか。そのバランス感覚を養うことこそが重要になってくるのではないでしょうか。

 

今回も長文を最後までお読み頂き有難うございました😆