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古美術鑑定士・中島誠之助が「いい仕事してる」理由

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「良い仕事してますね〜」の決め台詞で一世を風靡した、古美術鑑定家の中島誠之助さん。その中島氏の書いた本を読みました。その本がこちらの

 

中島誠之助著 「ニセモノはなぜ人を騙すのか?」

ニセモノはなぜ、人を騙すのか? (角川oneテーマ21)

ニセモノはなぜ、人を騙すのか? (角川oneテーマ21)

 

です。

中島誠之助氏が書いているということで、テレビの「何でも鑑定団」的な鑑定の裏話的な本かと思いきや、「人間というものがそもそもニセモノとホンモノが入り混じっているような複雑な生き物である。そして、だからこそニセモノとホンモノが入り混じるような混沌さえも許容するような世の中こそが文化的な深みのある社会なんだ」という社会論的な深みのある話で、なかなか楽しませて頂きました。

 

本物か偽物か? より大切なこと 

中島氏の面白い所というか深い所は、物の価値というのは捉え難く、単純に「これは誰々が作ったから本物である。素晴らしい作品である。」というようには決まらないと考えているところです。

むしろ中島氏はその物に対して、その持ち主がどのような思いを持ち、どのような物語をその物に見出しているのかこそが重要だと仰っています。だから、鑑定を依頼する人が本物だと信じていれば、それは歴史的な事実がどうあれ、その人にとっては"ホンモノ"としての価値がある。そのような思いを汲み取って、その人の思いに応えるような鑑定を伝えること、それこそが鑑定師にとって重要な役目であり、テレビに出演して鑑定される時もそのことを常に考えていたそうです。

 

偽物にも役割がある

そんな中島氏は「偽物にも存在意義がある」と言います。

美術品に限らず世の中には「本物」と「偽物」がある。でも、そんな偽物をすべて排除しようとすれば世の中はギスギスした生きづらい世の中になってしまうという。

なぜなら、本物と偽物を分けるのは結局不完全な人間であるし、上に書いたようにその人間が本物だと信じれば、その思いは本物であるし、たとえその「物」自体が偽物であったとしても、本人にとっては本物と同じ価値を持つことになるからです。

 

そんな本物と偽物が微妙なバランスで受け入れられる社会こそが、「本物の社会」であり、偽物はむしろそのような社会に面白みを加えたり、社会の潤滑油になるような存在として、「存在する意味のあるものになる」と中島氏は述べるのです。

うーん、深い!!

 

「純粋伝世(でんせい)」こそ日本文化の真骨頂

その中島氏が日本の文化・・・・具体的には骨董品や美術品ですが、その素晴らしさとして挙げるのが、人から人へと伝えられてきた「純粋伝世」です。

たとえばツタンカーメンのマスクや、ミロのヴィーナス、中国大陸に伝わっている焼き物などは、墓から"出土"したもので「発掘伝世」というそうです。

それに対して日本の美術品は、人の手から手へと伝えられた「純粋伝世」であることが、世界でも珍しい日本の誇るべき文化だとのことです。確かにそう言われれば、日本の骨董品や美術品で「発見された」というのは聞きますが、「発掘された」というのは聞いたことがないですね。

 

そして、このような「人の手から、別の人の手へ渡る」という歴史の中で、金額では表せない「価値」がその美術品や骨董品に備わっていく。いわば、そのような物語が美術品や骨董品を作り上げていくのです。

そのことを述べる中で中島氏の次の言葉がとても印象的だったので、引用しておきます。

 

”だから私が「(何でも)鑑定団」で、どんなものにでも「大事にしてくださいよ」とコメントする理由はここにあるのだ。

カネではなく、「心」が大切なのだ。

そうすることで、やがてはホンモノが見分けられる心が生まれてくると私番組を通して、視聴者に訴えたいと思っている。”

 

カネではなく心が大事。

言葉にすればなんてことのないものですが、虚実入り交じる古美術の世界で、騙し騙された長い経験を経た末に、中島氏から出た言葉として考えると実に奥深い言葉だなと感じます。

 

カネではなく心が大事。人の思いこそが、ただの「物」に意味を与え、価値を生み出していくのである。

 

中島誠之助・・・うーん、いい仕事してますね!! (笑)

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😊