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「労働者働かせ放題」が着実に進行。高プロ制度の実態

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今春から実施される高度プロフェッショナル制度(高プロ)。去年の国会審議で大騒ぎになったこの新しい制度の恐ろしいところは、対象になる

・年収

・職種

・労働時間の管理方法

について、厚生労働省が独自に制定できる「省令」で決めることができるという点です。 

つまり国会の審議や承認を得ることなく、厚生労働省に務める役人が勝手に決めることができるということです。「そんな馬鹿な」と思われるかもしれませんが、これは本当のことです。

で、実際、この高プロに該当する人の最低賃金が適切なものかどうか確認する方法を厚労省が決定したそうです。

 

厚労省内で決められたルールが労働者を縛る

「高プロ最低賃金、確認方法を決定 厚労省:朝日新聞デジタル

厚生労働省は対象者の賃金が最低賃金を上回っているかどうか確認する方法を決めた。労働政策審議会(厚労相の諮問機関)が8日、関連の省令案を「妥当」と答申した。」

 

ね?

厚労省の中ですべて決まってしまう。

厚労省の役人が作った規則に対して、厚労省が選んだ”厚労省に都合良い判断をする(可能性が高いと疑われても仕方のない)人たち”が、「これが妥当ですね」と答えればもうそれで決定され、実際に私達の労働に影響を与える訳です。

素晴らしいスピードですね!

これぞトップダウンで決める効率化の極みでしょう!!

さすが厳しい受験勉強と出世争いを勝ち抜いてきた優秀な官僚様たちです!! (もちろん皮肉です(笑))

 

どのような内容が決まったか

さて、ではその「省令」とやらでどのようなことが決まったのでしょうか?

朝日新聞の記事によりますと

 

「4月に導入される高プロには労働時間の規定がなく、会社には在社時間と社外で働いた時間を足した「健康管理時間」を把握することが義務づけられる。高プロの対象者に支払われることが決まっている賃金を、この健康管理時間で割った額が、最低賃金を上回っているかどうかで確認することになった。」

 

そうです。

・・・・んんん? ちょっとよく分かりませんね。私も最初よく分かりませんでした(笑)。

まずそもそも「健康管理時間」って何やねんって話ですね。これが理解できていないとちょっと意味が分からないです。

 

健康管理時間は通常の「労働時間」とは違う。

高プロ制度においては、現在と同じような意味での「労働時間」という尺度では時間を計算されません。

通常の労働時間というと出社してから退社するまでの時間ですが、少し細かく分けると

 

1) 出社してから昼休みまでの労働時間

2) 昼休み

3) 昼休みから退社するまでの労働時間

4) 社外での労働時間

5) (会社によっては)労働組合での活動時間

 

という感じで細かく分かれます。

普通は2の昼休みは労働時間から除外されますね。あるいは工場とかだと2時間おきに休憩時間があったりしますので、それも除外されます。

 

高プロの賃金計算に用いられる時間の計算には、このような労働時間は用いられません。その代わりに使われるのが「健康管理時間」というもので、これは上記の(1)〜(5)全部足し合わせたものになります。

要するに、1日全部仕事をする時間として割り当てるから、その中は自分で調整しろ、ということです。

 

健康管理時間を守っても健康が管理されるとは限らない

その健康管理時間(自己裁量で働いた時間)が週40時間を超えないようにしなさい、それが健康を管理するための指標となる時間ですよってことなのでしょうが、これの面白い(?)のが、「健康管理時間を越えたからと言って特に罰則はない」ということです。

さらに、健康管理時間である40時間を超えた時間が「月当たり100時間」を超えたら医者と面談が必要になります。しかし、べつに医者にドクターストップをかける権限はありませんので、余程目に見えて体調が悪化していない限り、あるいは労働者本人が会社をクビになっても良い覚悟で「もうこれ以上働けませんからドクターストップ掛けてください」と訴えれば、医者から会社に指導が入る”かも”しれません。

 

ちなみに、健康管理時間の40時間をどう管理するか? ですが、基本的には「自己申告」になる可能性が高いです。

一応、会社パソコンの使用状況などのチェックで会社側も把握するべきってことになっているようですが、社外で営業活動やイベント活動などをやっている時はパソコン使っている訳じゃありませんので、実態の把握なんてほぼ不可能ですね。

あれかな。脳にICチップ埋め込むとか、そういう話ですか(笑)。

 

契約時の最低賃金はあくまで「予定」

で、話が戻りますが、このような明らかに問題アリアリの「健康管理時間」を使って、労働者に支払われる賃金が妥当かどうかをチェックする、というのが今回の厚労省の決定です。

「労働者に支払われる予定の年収」を「健康管理時間」で割って、それが最低賃金を下回らなければOK、ということです。

 

さて、今さらっと書きましたが、この計算で用いられるのは「労働者に支払われる”予定”の年収」です。実際に支払われた金額ではありませんのでご注意を。

たとえば、年収契約時に予定年収が1,000万円だったとしましょう。高プロ制度というのは「成果」に対して支払われる報酬制度ですので、極端な話、会社側が「あなたは1,000万円分の仕事をしていませんので、500万円しか払いません。」と後で言われてもOKなのです。

ちゃんと契約時に最低賃金をクリアし、問題ないものとして契約されているわけですから。むしろ、その契約にある成果を達成できなかった労働者の方が契約違反ということです。当然残業代も支払われません。

 

ちなみに、高プロ制度は労働基準法の適用範囲外になりますので、労働基準法で守られることもありませんので(笑)。

中身をすべて役人が独断で決める恐ろしさ

という訳で、聞けば聞くほど恐ろしい高プロ制度ですが、一番恐ろしいのは「何の仕事が高プロ制度なのかもまだ決まっておらず、厚労省が決めることになっている」ということです。

今まで述べてきたような高プロ制度の恐ろしさを他人事だと思うことなかれ。

あなたが今やっている「普通」だと思っている仕事が、明日には「高度プロフェッショナルな仕事だ」と認定されるかもしれませんよ!

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆