Dive Into The World

話題のニュースがどんな意味を持つのかを分かりやすく解説。普通の人たちと専門家をつなげるようなブログを目指します。

なぜ乳製品が値上げされるのか? その影にある日欧EPA。

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こんな所で公言することでもないかもしれませんが、私は自他ともに認める

 

乳好き・・・もとい、乳製品好きです。

 

牛乳はもとよりヨーグルト、チーズ、バター、練乳、アイスクリームなどなど・・・本当に前世が牛だったんじゃないかと思うほどにミルク好きです。

↑これ分かりますかね?

分からない方はこちらの動画をww

DANCE☆MAN ミルク好き - YouTube

 

そんな私にとっては辛いニュースが入ってきました。 

雪印メグミルクは6日、牛乳やヨーグルトなど計79品を、4月1日出荷分から値上げすると発表した。出荷価格や希望小売価格を1・7~6・1%引き上げる。原料となる生乳の価格が4月から上がるため。明治、森永乳業に続く値上げの発表で、乳業大手が同時に主力商品の値上げに踏み切る。

本当にこれで大手が揃って乳製品の値上げを宣言したことになります。

一日一回乳製品を摂らないと死んでしまう私には辛いですよ、これは!(T_T)

 

乳製品値上げの理由は?

値上げの理由については記事の中でも述べられていますが、「酪農家が減って生乳の生産量が減少しており、4月から取引価格を引き上げることで大手乳業メーカーと生産者団体が合意」したことです。

 

もしかしたらこの理由の「大手乳業メーカーと生産者団体が合意」という部分に「すわ、談合か!!」と脊髄反射的に考える方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっとお待ちください。

そもそも農業や工業に限らずどんな産業であっても、材料とお金があればすぐに生産を始められるという訳ではありません。単純な知識ではなく経験に裏付けされたノウハウはもちろん、長期的、安定的に生産活動を続けていけるというある程度の保証がなければ継続的な運営はできません。

例えば酪農にしても、どこかから牛を買ってきて、適当な土地で放牧して、ネット通販で購入したエサをやってれば、いつでもどこでも誰でも始められるほど簡単ではないことは容易に想像がつくでしょう。

数年どころか10年、20年単位で考えなければまともに酪農を営むことはできません。

 

また、その酪農家から提供される生乳を使って製品を作るメーカーにしても、安定した原料を入手できる見込みがあるからこそ、それなりに安価な価格で製品を提供できるのです。逆に原材料入手が不安定になったら企業は"最悪の状況"でも利益が取れるように価格設定するので、価格はグンと上がるはずです。

 

そのような事情を考えれば「大手乳業メーカーと生産者団体が合意」したことは、安定した生乳の入手と、私達への乳製品の提供という意味ではやむを得ないことなのです(もちろん程度問題はあると思いますが)。

 

生乳の安定供給に日欧EPAは寄与するか?

ところで先日日本とヨーロッパの間で日欧EPAという自由貿易協定が発行されました。日本の小売業でもこれによって欧州産のワインやチーズなどが安くなると歓迎する向きがありましたが、これによって欧州から生乳の安定供給がもたらされ、乳製品も安定して供給ができるようになるでしょうか?

 

残念ながらその望みは薄いでしょう。

というか、完全に逆効果です。

 

なぜならそもそも乳製品の原料である生乳をヨーロッパから持ってくることは不可能です(腐っても良ければ別ですが・・・)。あくまでヨーロッパから入手できるのは加工品でしかありません。

ですから、生乳の入手先としてはあくまで日本国内の酪農家か、輸入するにしてもせいぜいオーストラリアかニュージーランドが限界でしょう。日欧EPAでは対応できません。その意味で日欧EPAが日本の乳製品の安定供給にプラスになる可能性は低いです。

 

しかし、問題はそれで終わりません。

日欧EPAが日本にとって逆効果というのは、安い乳製品が日本に入ってくることによって日本の酪農家の経営が厳しくなることは容易に想像がつきます。元々少ない酪農から離れる農家も増えてくるでしょう。そうなると乳製品の原料の国内調達は難しくなり、海外頼みになってきます。

 

食を海外に頼らなければならないという危機

当然ですが人間は食べられなければ生きていけません。

食料の安定確保は絶対に守らなければならない一線です。

それを外国に握られてしまったらどうなるのか?

 

確かに今すぐ海外からの食料輸入がストップするという可能性は低いように思われます。しかし、それはあくまで非常に短期間の"現在"だけの話であり、半年、1年後にこの状況が保たれている確証はありません。政治的な問題に加え、そもそも大規模自然災害などが発生したらそれだけで状況は一変します。あるいは、その「食」を人質にとられて無理な交渉をしてくる国も出てくるかもしれません。

したがって、国内で安定した食料を長期的に確保できる環境を作ることは非常に重要なのです。

 

食料安全保障の重要性を理解してないのは日本だけ

当然日本以外の諸外国はその食料の確保、いわば食料の安全保障の重要性を十分認識しています。

アメリカでは昨年農家救済策を打ち出し、農業法でセーフティーネットを強化。農産物の価格が下がった際に、農家の収入を8割以上補填する取り組みを行っています。

また、日欧EPAの相手であるEUも国際化に伴う食料安全保障の確保や気候変動リスクへの対応を課題に挙げており、農家の所得を支える直接支払いと農村振興政策を強化する方針を打ち出しています。

 

確かにアメリカもEUも農業製品の輸出を推進していますが、あくまで農家を守る方策を万全に整えた上で勝負しているのです。日本のように第六次産業などという言葉、農家の自助努力に頼った"攻めの農業"などと絵空事を述べている馬鹿な国はどこにもないのです。

 

 「日欧EPAでワインやチーズが安く買える! やったー!!」などと喜んでいる、その真後ろには巨大な落とし穴が待ち構えているのだということを今一度考え直す必要があるのではないでしょうか?

  

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました嬉しい