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科学の価値を"金勘定"でしか測れない日経新聞に「科学の意義」を語る資格はない。

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以前の記事でILC(International Linear Colider/国際リニアコライダー)という科学技術分野の国際的巨大プロジェクトが日本に誘致される可能性が高いことを書きました。

 

 

どういうプロジェクトかと言いますと・・・

 

国際リニアコライダー(ILC)は、49の国と地域の300以上の大学や研究所の科学者やエンジニア2,400人以上が参加する国際的な取り組み。

全長約20km、絶対零度に近い超低温に保たれた超伝導加速器空洞(トンネル)を岩手県の地下に建設する。

そのトンネルの両端から中心に向けて電子と陽電子を加速させて発射。電子と陽電子のビームが1秒間に約7,000回、250ギガ電子ボルト(GeV)の重心系衝突エネルギーで衝突し、大量の新たな粒子が生成させることで宇宙開闢(かいびゃく)の謎を解き明かすプロジェクト。” 

 

です。

分かりませんよね?

大丈夫です。

前にも書いたように、私もほとんど分かってませんから!!!(笑)

 

細かい仕組みはさておき、この件に関しては下記のことを理解して貰えば充分です。

それは

 

「宇宙開闢の謎を解き明かすという国際的な超巨大プロジェクトが、日本の岩手県に誘致されようとしている。

これが実現されれば、世界中の最先端の知能を持つ科学者が日本に集まり、新時代の技術や知識が日本から生まれることになる」

 

ということです。

 

このILCプロジェクトについて、とある有名新聞社が見解を載せました。

皆さんご存知の日本経済新聞、略して日経です。

 

この記事の中でILCの建設に対して日経新聞は反対の意を表しています。

もちろん堂々と論拠を示して反対するのであれば、それはそれで構いません。
反論は許さない!という硬直化は社会の文化を貧困化させますので。
 
ですが、この日経の記事は「こういう理由でやるべきではない!」と堂々と反対の意見を表明するのではありません。
 
「関係者」とか「文科省幹部」といったどこの誰だか分からない人間の言葉を引用し、ひたすら「必要経費」ことだけを取り上げる一方で、効果に全く触れようとしないことで、「お金が掛かるだけの科学者の道楽」であるかのような悪い印象だけを持たせようとする「印象操作記事」なのです。
 
こういう記事の書き方が卑怯なのは、
 
仮に後からILC大成功!となったとしても「私達は慎重に考える必要があるとは言っただけで反対してません」と言えますし、
 
逆に失敗した時には「だから私達は反対したんですよ」と言えます。
 
つまり、どうとでも取れる主体性のない記事・・・しかも“雰囲気で”反対することを読者に促す内容なのです。
なぜ彼らがこのような記事を書くかは簡単です。
 
単にILCを金食い虫としか考えておらず、何としてもやめさせたい財務省の意向に従っているだけで、日経自体は何も考えてないからです。
 
日経が考えているのは、財務省の意向に逆らったら記者クラブから外されたり、国税庁が飛んできて難癖をつけられることになる。
だから財務省の意向に沿った記事を、後々どう転んでも自分達の立場が悪くならないような玉虫色の表現で書く。
それだけです。
 
さて、その日経が記事の中でILC建設に反対している論拠は何でしょうか。
日経の記事によると
 
1) 問題は予算
2) 科学的な意義を問う声が根強く残る点
 
だそうです。
 
またこれか・・・という話で、一々反論するのも面倒臭いのですが・・・
 
1) 予算
そもそも日本が負担することになるILC加速器の建設費用は10年で3,000億円。
1年あたり300億円です。
それに対して、下記のILCと野村総合研究所の試算によると
 

ILCは建設・運転の計30年間で日本全国に4・3兆円の経済波及効果、約25万人の雇用創出が見込まれる。地元 への影響も大きく、岩手県の大平尚・首席ILC推進監は「被災地を含む東北再生に向け、人口減や高齢化への歯止め、観光客誘致にも効果が期待できる」と話す。

※ILC公式HPより引用

 

4.3兆円の経済波及効果と役25万人の雇用創出が見込まれています。
たった300億円/年で!!
 
いわゆる「金勘定」のレベルでだけ考えたとしても、これだけ費用対効果が高いプロジェクトです
これが一体どういう思考回路をたどれば、「予算という壁が立ちふさがる」という話になるのでしょうか。
 
これで日本“経済”新聞なのですから、意味が分かりません。
 
で、もう一つの理由がこちら。
 
2) 科学的な意義を問う声が根強く残る点
この論拠が本当にひどいのですが、記事によると・・・
 
「新粒子発見など研究者の誰もがノーベル賞に値すると太鼓判を押せるだけの成果が出る可能性は極めて低いというのが関係者の見方だ。」
予算規模に見合った科学的成果は期待できない(文科省幹部)との指摘がある。」
 
・・・まず、その「関係者」とか「文科省幹部」というのは誰でしょうか?
 
その方々は世界の超一流科学者が参加しているILCのプロジェクトチームよりも、科学技術の理論、現状、問題点、そして将来の展望について深い知見をお持ちなのでしょうか?
そんな人が日本にもっといるのであれば、日本はもっとノーベル賞を獲得できるはずですが???
 
 
そもそも科学技術の発展というものは、「これだけ投資したから、これだけの収益や成果が見込める」など費用対効果が計算可能な世界ではありません。
 
例えば、皆さんが普段使っているWebサイトですが、これもCERN(セルン。欧州原子核研究機構)というスイスにある研究機関が、自分たちの情報をやり取りするために構築したシステムが元になっています。
しかし、別に彼らはそのシステムを構築するためにCERNを作ったわけではありません。
 
また、私達がしょっちゅう使っているGoogle MapなどのGPSを使用した機能などは、アインシュタイン相対性理論がなければ正確な距離や位置を測定することはできません。
しかし、アインシュタインGPSという機能を開発しようとして、相対性理論を考案したのでしょうか?
そんなことは断じてありません。
 
どのような成果が得られるかは、あくまで副産物にしか過ぎないのです。
 
 
私はこのような「科学の価値や目的」を問うときに、必ず思い出す話があります。
 
アメリカにフェルミ国立加速器研究所という研究機関があります。
1969年にこの研究所が設立される際、今回のILCと同じ「加速器」を建設するにあたり、所長のロバート・ウィルソンが米国議会に証人として召喚されました。
その際
 
素粒子加速器の建設は、我が国の防衛にどのように役立つのか?」
 
と質問されました。
(加速器研究は当時原子力研究の一環だったため、国防との兼ね合いが重視されたので)
 
それに対してウィルソン所長はこう答えたそうです。
 
「この加速器は、直接には国防の役には立ちません。
しかし、わが国を守るに足る国にすることに役立ちます。」
 
と。
 
私は特にアメリカという国が好きな訳ではありませんが、このような掛け合いが議会で行われ、しかもそれでGOサインが出せるという肝の座り方というか、小さいことにこだわらず大局を観て判断できる豪胆さは立派だと思います。
 
 
願わくばこのILCプロジェクトに関して、単なる「金勘定」ではなく、「国家としていかにあるべきか?」という大局を見据えた判断を日本政府と財務省が下してくれることを祈ります。
 
今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました😆